国の宝

おはようございます。

2月、今月もよろしくご愛読下さい。2月を「如月(きさらぎ)」ともいいます。3日は節分、4日は立春立春と言いましてもまだまだ寒い日が続きこれから一段と寒くなります。で、「さらに着る」ということから如月、1月と同じように寒いから如月とも、古人は体感、肌で感じる気配を大切にしたのではないでしょうか。そして次代に経験知として伝えたのです。
「国の宝」。
今日私は66才の誕生日、先祖、両親、学校、比叡山、師、心華寺、愛宕寺の信徒の皆様、研修でご来寺いただく会社の皆様、また社会の多くの皆様に感謝致します。お世話になっています身近な人々を数えても両手に余ります、本当に沢山の皆様のお力とお陰です。
私は日々のお勤めの最初は15年前比叡山延暦寺様からご分灯いただきました一千二百年「不滅の法灯」から始めます。遠いご恩から身近なご恩へつながっているという思いを日々確かに一日を歩みたいと静かに心に秘め過ごすのです。「あきらけく のちの仏の御世までも 光つたえよ 法の灯火」とお大師様が歌われた如く、そのことによって弟子達が伝えてくれるであろう事を思うのです。
何をお唱えするかと申しますと、伝教大師様が今から約千二百年前、弘仁9年(818年)にお上に上奏されました「山家学生式(さんげがくしようしき)」です。それを「国の宝」という題にしたものを読誦します。
「宗祖大師宣給(のたま)わく。国の宝とは何物ぞ、宝とは道心なり。道心ある人を名づけて国の宝と為(な)す。
故に古人言わく、経寸(けいすん)十枚あるもこれ国の宝にあらず、一隅を照らすこそ国の宝なれ、と。
古哲(こてつ)また云わく、能(よ)く言いて行うこと能(あた)わざるは国の師なり、能く行(おこの)うて言うこと能わざるは国の用(ゆう)なり、能く行い能く言うは国の宝なり。三品(さんぼん)の内、言うこと能わず行うこと能わざるを国の賊(ぞく)と為す。
乃(すなわ)ち道心ある仏子(ぶっし)、西には菩薩と称し東には君子と号す。悪事を己に向け好事を他に与え、己を忘れて他を利するはこれ慈悲の極みなり。」。
とても短いものですが非常に中身のある言葉です。人はおおよそ三種類の型があると言われます。第一は「言うことはできても、行うことが出来ない人(行うことはできずとも理論が教えられる)は先生になりなさい」。第二は「行うことはできても、教えることが苦手な人(論理的に話ができない)は国の為に働きなさい」。第三は「行うことも言うことも出来る人(言行一致できなおかつ理論を伝えられる)が国の宝だと」言うのです。
しかしこの三種の前にお大師様は「一隅を照らす人こそ国の宝だ」と明言しています。言行一致できずとも、己を自覚して「与えられたポストにベストを尽くすことが人としての本分」で、そのような思いで人生を歩む人が「国の宝」だと教え導くのです。この教えに勇気りんりんです。
しかしこの三種類にも入らない、「言うことは不平不満、やればやったで愚痴る面倒くさがるような人は賊、国賊だ」というのです。手厳しいことですが、「出来ることで人事を尽くしなさい」と教えているのです。上手下手、不平不満で人生を腐らすようではいけないのです、上には上がいるのです。
そしてお先にどうぞの精神での実践徳目「利他の精神」でお互いに譲りあってこそ素晴らしい社会生活となることを「悪事を己れに向け好事を他に与え、己を忘れて他を利する」という言葉で教え、「慈悲の中の慈悲の実践」をしましょうというのです。
経寸十枚が国の宝ではない、ダイヤモンドやお金、物が宝ではないというのです。「人こそが国の宝なのだ」と。人間は心さえ失わなければ、道を歩む心さえ失わなければ日々希望に向かい喜々として歩むことができるのです。ともすれば脱線しかける私ですが、沿って歩むことができる道のお陰で朋も同志もでき道連れくださる方も多くできました。
この教えは私の宝です。目の前のことをコツコツと行い歩むことができたことに喜びと感謝をしています。先人が道を示して下されたからこそ歩めるありがたいことです。
この「国の宝」という教えを日々お唱えすることから一日をスタート。今日は誕生日でもありますし、改めて一からやり直し出直しでスタートです。
皆さんも新たな気持ちで今月のスタートをお切り下さい。2月は日数が少ないですので一日を二日くらいの時間割で進んでちょうどくらいになるかもしれません。しかし慌てず焦らずが肝心、今月もよろしくお願い致します。今月も祈り学びにて皆様の人生が素晴らしい人生となりますようお祈り致します。

世界平和をお祈りいたしましょう。Flower in your mind・ありがとう・心に華を咲かそう。 合掌
 私たちは東日本大震災の復興を祈り応援します。
写真は「不滅の法灯」です。そして先日下関から帰る途中瀬戸内の海に上る朝日の美しさです。お日様は毎日昇りますこれも嬉しい。